本年度は未熟・成熟B細胞における膜結合型B細胞レセプター(BCR)刺激後のCa^<2+>濃度変化に対するミトコンドリアCa^<2+>輸送体(ミトコンドリアNCX (NCXm)とCaユニポータ(CaUni))の寄与を明らかにする目的で、未熟DT40・成熟A20 B細胞株を用いて細胞質Ca^<2+>(Ca^<2+>c)、ミトコンドリアCa^<2+>(Ca^<2+>m)と小胞体Ca^<2+>を測定した。CaUni阻害剤のRu360存在下ではBCR刺激後のCa^<2+>cと小胞体Caポンプを介する小胞体Ca^<2+> uptakeに著明な変化は無かった。これらの結果はB細胞でのCCa^<2+>濃度変化に対するCaUniの寄与が少ないことを強く示唆した。しかし、NCXm遺伝子(NCLX)のヘテロノックアウトDT40 B細胞(NCLX<+/->ではNCXm活性(細胞質Na^+依存性Ca^<2+>排出)が著明に減少した。抗IgM抗体によるBCR刺激に対して、野生型ではほとんどの細胞でCa^<2+>cの上昇が認められたが、NCLX^<+/->細胞ではCa^<2+>cはほとんど変化しなかった。NCLX^<+/->細胞では、小胞体Ca^<2+> uptakeが低下し、その結果、小胞体Ca^<2+>含量が著明に減少していた。これらの結果はNCXm特異的な阻害剤(CGP-37157)の添加実験と成熟A20 B細胞を用いたNCLX遺伝子サイレンシング(siRNA)実験で良く再現出来た。これらの結果から、NCXmは免疫B細胞で小胞体Ca^<2+>含量を調節し、BCR刺激後のCa^<2+>c応答を調節することが明らかになった。
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