電位依存性プロトンチャネルVSOPは貧食細胞において活性酸素の産生を制御する分子である。しかしながら、VSOPが活性酸素を産生する酵素であるNADPHオキシダーゼをどのように制御するかは不明な点が多い。VSOP抗体を用いた免疫染色法により、VSOPが細胞内顆粒に存在し、NADPHオキシダーゼと共局在すること、さらに酵母不溶性画分であるザイモザンを貧食させた時に形成される食胞にVSOPが局在することを明らかにしてきた(未発表データ)。今回は、VSOPが食胞に集まる過程(動的変化)を観察するために、GFP-VSOP融合遺伝子をマウス由来のマクロファージ系培養細胞RAW264.7に遺伝子導入した。IgGを結合させたラテックスビーズをRAW細胞に貧食させ、GFP蛍光を観察した結果、ビーズを貧食する過程でビーズを囲むようにGFP蛍光が観察された。またGFP蛍光を持つ細胞内顆粒がビーズを取り囲む食胞に融合する様子が観察された。これらの結果から、病原菌などの異物を効果的に除去するためには、食胞の形成過程で供給される細胞膜由来のVSOPだけでなく、顆粒に蓄えられたVSOPが積極的に食胞に供給される必要があると考えられる。つぎに、VSOPとNADPHオキシダーゼが共局在する意義を調べるために、NADPHオキシダーゼをCOS-7細胞に安定発現させたCOS^<phox>細胞と通常のCOS-7細胞それぞれにVSOPを遺伝子導入し、VSOPの活性化キネティクスをホールセルパッチクランプ法で調べたが、顕著な変化は見られなかった。すなわち、NADPHオキシダーゼの不活性化状態時には、VSOPのキネティクスを変化させる要素はないと考えられ、NADPHオキシダーゼの活性化時にVSOPのキネティクスが変化する可能性を視野にいれた実験を検討する必要がある。
|