研究概要 |
Cdka11は2型糖尿病の新規危険因子である。Cdka11遺伝子変異による2型糖尿病発症メカニズムを明らかにするために、当該年度において以下の研究を実施した。 1、環境要因負荷による2型糖尿病の発症誘導-平成22年度においてCdka11欠損マウスは、インスリン分泌が低下し、マイルドな耐糖能異常を示すことが明らかになったので、23年度においてCdka11欠損マウスに総カロリーのうち脂肪由来のカロリーが45%となる高脂肪食を9週に渡り摂取させ、その後糖負荷試験を行い、耐糖能の変化及び膵β細胞機能に関わる遺伝子の発現を検討した。 その結果、高脂肪食を摂取したCdka11欠損マウスの耐糖能及びインスリン分泌は、高脂肪食を摂取した野生型マウスと比べ有意に低下した。また、インスリン負荷試験を行った結果、Cdka11欠損マウスと野生型マウスとの間で有意な差が見られなかった。これらのことから、高脂肪食摂取によてCdka11欠損マウスでは、末梢のインスリン感受性ではなく、高脂肪食を摂取する前よりも膵β細胞機能がさらに低下したことが明らかになった。また、Cdka11欠損マウスの膵β細胞よりRNAを精製し、β細胞機能に関わる遺伝子発現を検討した結果、小胞体ストレスに関わる遺伝子発現がCdka11欠損マウスにおいて有意に上昇した。 2、Gdkal1の生化学的解析-Cdka11はCdk5を介してインスリン分泌を制御している可能性がある。そこで、試験管内にCdka11が存在するあるいはしない条件下において、Cdk5及びその基質であるdynaminを加え,Cdk5のリン酸化酵素活性にCdka11が関与するかどうかを検討した。その結果、Cdka11はCdk5の酵素活性に影響を与えないことが明らかになった。一方、Cdka11がtRNAを修飾する酵素で、リジンの正確な翻訳に重要であることから、Cdka11欠損マウスの膵β細胞におけるインスリンのリジン残基の翻訳を検討した。 その結果、Cdka11欠損マウスの膵β細胞のインスリンでは、リジン残基の異常な翻訳が見られた。
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