近年、我々はラット副腎由来褐色細胞腫PC12およびその亜株PC12D細胞において、神経成長因子NGFによる神経突起伸長にはNa^+/K^+/2Cl^-共輸送体(NKCC1)を介した細胞内へのCl^-の取込みが必須であることを明らかにした。一方、神経突起伸長には様々な低分子量Gタンパク質が関わっていることが知られており、そのうちのRhoAは、下流の様々なエフェクター分子を介して神経突起伸長を抑制することが知られている。本研究においては、細胞内Cl^-と低分子量Gタンパク質の活性制御に着目し、次のことを明らかにした。 (1)PC12D細胞を低Cl^-濃度の培養液中でNGF処理すると神経突起の伸長は有意に抑制されるが、RhoAの下流のエフェクター分子であるRho kinaseの特異的阻害剤Y-27632を加えておくと低Cl^-による抑制はレスキューされた。(2)PC12細胞(PC12細胞の親株で、PC12D細胞よりも神経突起伸長が遅い)においても低Cl^-濃度の培養液中では神経突起伸長は有意に抑制されるが、Y-27632によるレスキューは見られなかった。(3)PC12D細胞の方がPC12細胞より、RhoAの発現量が多い。(4)RhoAの発現は低Cl^-濃度の培養液で処理しても変化しなかった
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