心臓の生理機能を理解するために、ラット血液交叉灌流摘出心臓を用いて、左心室圧-容積と冠循環の動静脈血液酸素濃度較差のリアルタイム測定により、心臓一拍毎の心筋酸素消費量と発生する総機械的エネルギーの関係を算出し、同時に遺伝子組換え型蛍光カルシウムプローブ、G-CaMPによる心臓全体でカルシウムイメージングを行う実験系を確立する。研究協力者である埼玉大学脳科学融合センター中井淳一教授・大倉正道准教授からG-CaMPプラスミドベクターの譲渡を受け、研究協力者である生理学研究所行動代謝分子解析センター、平林真澄准教授に依頼し、G-CaMPトランスジェニックラットの作製を行った。初代G-CaMPトランスジェニックラットのカルシウムイメージングでは蛍光強度が弱く変化率も小さかった。さらにmotion artifactによって正確なデータを得ることが困難であった。そこで、改良型G-CaMPとDsRed(赤色蛍光)の2つの遺伝子を発現させた2波長計測により、それらの問題を解決することにした。新たにトランスジェニックの作製を依頼し、現在F1を飼育中である。また予備実験として、ブレインビジョン社製の高速イメージングシステムを用いて、初代G-CaMPと蛍光色素であるFluo-3による心臓全体でカルシウムイメージングを行っている。 この実験系が完成すれば、心臓において様々な条件下でのカルシウム動態とエネルギー代謝の関係を計測することが可能となり、従来考えられていた理論の立証や、さらには心疾患の病態生理の解明等に活躍が期待できる。
|