研究概要 |
洞房結節に存在する心ペースメーカー細胞において自動能の発現に重要である2つの電流系、持続性内向き電流(Ist)及び背景Na^-電流(I_<Na,b>)は、その発見から10年以上が経過した現在においても分子実体が解明されていない。そこで、これら2種の電流系の分子基盤となるイオンチャネルを同定する目的で、マウス洞房結節および右心房から調製したRNAを用いてマイクロアレイ法による遺伝子発現解析を行い、洞房結節において高発現するイオンチャネルおよびその関連タンパクの検索を行った。主に電位依存性のNa^+チャネルおよびCa^<2+>チャネルに着目すると、Scn7aが2.1倍、Scn4bが3.1倍、Cacna1dが1.7倍、Cacna1gが1.8倍、Cacna2d2が1.3倍、Cacnb4が2.6倍、また新奇の4×6TM型イオンチャネルNALCNは1.14倍、洞房結節において発現量が高いことが分かった。次に、これまでの研究で知られているIstの電気生理学的・薬理学的特性からまずはCacna1dに着目し、発現実験を行うため通常のRT-PCR法によりcDNAクローニングを行った。結果、心臓においてCacna1dは選択的スプライシングによって生じるN端部分の異なる2種の分子(Cacna1d_<(1a)>)およびCacna1d_<(1b)>)が発現し、特にCacna1d_<(1b)>は洞房結節に高発現していることを見出した。現在、アフリカツメガエル卵母細胞の発現系を用いた二本刺し膜電位固定法により、このCacna1d_<(1b)>を単独で発現させた場合、もしくは何らかの補助サブユニット(まずは洞房結節で発現の高かったCacna2d2やCacnb4)と共発現させた場合にIstを再構成することが出来るか電気生理学的解析を行っている。
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