研究概要 |
本研究では洞房結節に存在する心ペースメーカー細胞において自動能の発現に重要である持続性内向き電流(Ist)の分子基盤となるイオンチャネルを同定し、異所性発現系を用いてIStの再構成を目指している。昨年度、Istの電気生理学的・薬理学的特性からL型電位依存性Ca^<2+>チャネルCacnald_<(1a)>に着目し、心臓においてCacnaldにはN端部分の異なる2種のスプライスバリアント(Cacnald_<(1a)>およびCacnald_<(1b)>)が発現し、特にCacnald_<(1b)>は洞房結節に高発現していることを見出した。本年度はこの洞房結節特異的なアイソフォームであるCacnald_<(1b)>が付の分子実体である可能性について電気生理学的に検討を行った。アフリカツメガエル卵母細胞にCacnald_<(1a)>又はCacnald_<(1b)>,補助サブユニットとしてβ3,α2δ1(Cacnaldの実験でもっともよく使用されている補助サブユニット)を発現させ、二本刺し膜電位固定法により電気生理学的解析を行った。結果、Cacnald_<(1a)>およびCacnald_<(1b)>のどちらの場合でもCa^<2+>電流もしくはBa2+電流は観察されるものの、飢の特徴の一つである0.1mM Ca^<2+>(またはBa^<2+>)下で観察される非選択的な1価陽イオン電流は観察することができなかった。また、洞房結節での発現の確認ができた補助サブユニットとしてβサブユニットではβ2b,β2d,β2e,β4を、α2δサブユニットではα2δ2を共発現させて同様の実験を行ったがポジティブな結果を得るには至らなかった。今後は洞房結節特異的なCacnald_<(1b)>が更なる新奇な補助サブユニットと共にIstを形成する可能性、まだ着手していない洞房結節に高発現のイオンチャネルがIstを形成する可能性、の両者を踏まえIstの分子基盤の解明につなげたい。
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