本年度は白色脂肪細胞に発現するMICチャネルの活性化因子を探索することに重点をおいて研究を行った。 これまでに他の細胞において、MICはPIP_2によって活性が制御されることが報告されている。パッチピペット内液(すなわち細胞内液)をATP freeにするとMICはrundownするが、PIP_2を予め添加しておくとrunadownは起こらない。このため、ATP依存性にPIP_2が産生されてMICチャネルの活性を維持するものと考えられている。白色脂肪細胞においてもATP freeによってMICのrundownは観察されたが、驚くべきことにPIP_2の添加によってもrundownは防ぐことができなかった。他の細胞での報告では、加水分解されないATPアナログであるAMP-PNPではrundownが起こるので、ATPの加水分解によるPIP_2の産生がMICの活性を維持していると考えられる。しかしながら脂肪細胞のMICでは、AMP-PNPの添加によってもATPと同様にMICの活性が維持されたことから、脂肪細胞ではATPの加水分解およびPIP_2は活性制御に関わっていないことが示唆された。 また、MICと同一分子と考えられているTRPM7は、過酸化水素などの活性酸素によって活性化されることが報告されている。そこで白色脂肪細胞にホールセルクランプ下で過酸化水素を添加したところ、MICの不可逆的な抑制が観察された(IC_<50>=187μM)。 これらの結果から、白色脂肪細胞に発現するMICは、これまでに報告されているMIC/TRPM7とは活性制御機構が異なることが明らかとなった。
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