研究概要 |
アンジオテンシンII(AngII)の継続投与が骨格筋中の活性酸素の作用を介して活動筋反射を過剰にすることを前年度までに示した.本年度では,AngIIが骨格筋中に酸化ストレスをもたらし,また,NADPH酸化酵素を増加させるかについて検証した.DHE染色により,AngIIはラット骨格筋中に酸化ストレスをもたらすことを示した.またウェスタンブロットにより,AngIIはラット骨格筋中のgp91phox(NADPH酸化酵素の一種)を増加させることを示した.前年度の結果と合わせ,「循環器疾患で亢進するレニン・アンジオテンシン系は骨格筋中の酸化ストレスをもたらし,筋求心性神経の感受性を高めることで活動筋反射を過剰にする」との機序を推察した.これらの結果は,論文原稿にまとめられ,投稿準備中である. また,活動筋反射とは別に作動する中枢コマンドに着目した実験も行った.中枢コマンドとは皮質運動野から運動発現の意思に伴って惹起し,運動系とともに自律神経系も調節するメカニズムである.心不全では中枢コマンドによる交感神経刺激作用が過剰になる(Koba et al.2006)がその機序は不明である.心不全延髄中の酸化ストレスが中枢コマンド応答を過剰にするとの仮説の検証を試みた.心不全(心筋梗塞由来)ラットの過剰な中枢コマンド応答は,延髄吻側腹外側野にスーパーオキシドディスムターゼの模擬化合物であるテンポールを局所投与することで抑制された.健常対照群では,このテンポールの影響は認められなかった.また延髄吻側腹外側野近辺の活性酸素の増加が心不全ラットで観察された.これらの結果は上記の仮説を支持するものである.
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