これまでに我々は長期暑熱馴化が形成されたラットの視床下部で神経前駆細胞の分裂と分化が促進されていることを見出した。本研究では、長期暑熱馴化したラット視床下部で新生した神経前駆細胞の局在や熱刺激への応答性を解析した。さらに、暑熱暴露による神経新生を阻害した場合に暑熱馴化が形成されるか否か解析し、新生した神経細胞の暑熱馴化形成への関与について検討した。Wistar系雄性ラット(5週齢)を明暗周期12 : 12時間、自由摂食・摂水下、環境温24oCで2週間飼育した後、32oCの暑熱環境に暴露した。暴露開始直後からBromodeoxyuridine(BrdU ; 50 mg/kg/day)を腹腔内へ5日間連続投与した。また、ラット脳室内には細胞の分裂阻害薬であるCytosine-・-arabinoside(Ara-C)を持続的に投与した。40日間の暑熱暴露による長期暑熱馴化形成後に耐暑熱性の確認を行った。暑熱暴露により新生した神経細胞は前視床下部/視索前野や視床下部背内側核、視床下部腹内側核に多く発現していた。また、暑熱馴化形成後に再度温熱刺激を加えたところ、新生した細胞の一部にc-Fos二重陽性像を認めた。さらに、Ara-Cを脳室に持続投与したラットでは、Vehicle群に比較して耐暑熱性が有意に減弱した。暑熱暴露により新生した神経細胞が長期暑熱馴化形成時の体温調節機能の向上に関与する可能性が示唆された。
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