通常の神経細胞がグルコースにより正の制御を受けるのとは反対に、摂食亢進に中心的役割を担う視床下部弓状核Neuropeptide Y(NPY)ニューロンは低グルコースを感知し活動が亢進する。この時NPYニューロンが"何をエネルギー源に利用して活動を維持しているか?"という問いは細胞生物学的にも摂食調節理解のためにも検討する意義がある課題である。平成22年度の研究の結果、NPYプロモーターの下流にhrGFPを発現するNPY-hrGFPマウスを用い、加えてMCT1 mRNAに対するin situ hybridizationを行うことにより、視床下部弓状核内のNPYニューロンがどの程度の割合でモノカルボン酸輸送体MCT1を発現しているか詳細に確認できた。この結果を元に、NPY-hrGFPマウスから単離し初代培養した弓状核NPYニューロンにMCT1を発現させてどのようなエネルギー感知やエネルギー利用を行っているか、検討を始めているところである。予備的な検討において、モノカルボン酸輸送体のシャペロンであるBasigin/CD147とMCT1を遺伝子導入し共発現させることによって、神経系の細胞においてもそれら分子の複合体が細胞膜上に効果的に移動することを確認した。これらの結果状況をふまえて、次年度ではNPYニューロンにMCT1単独発現あるいはMCT1/Basiginの共発現を施した状態を比較して、細胞外の栄養素の感知への影響や、ニューロンの生存や神経突起伸長に対する評価を指標にしたエネルギー利用への影響を検討する予定である。
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