研究課題/領域番号 |
22790229
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
石井 寛高 日本医科大学, 医学部, 助教 (20445810)
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キーワード | 生殖生理学 / 神経内分泌学 / 生物物理学 / ホルモン / ステロイド / エストロゲン / エストロゲン受容体 / 脳ニューロステロイド |
研究概要 |
エストロゲンの急性作用を担う核外エストロゲン受容体のさらなる探索のため、ヒト・マウス・ラットエストロゲン受容体α(ERα)遺伝子構造の再検討を行った。その結果、従来知られていた遺伝子構造よりも、それらの構造ははるかに複雑であることが判明した。ヒト・マウス・ラットERα遺伝子の5'-非翻訳領域、イントロン領域、3'-非翻訳領域には多数の新規エクソンが存在しており、それらエクソンを選択的に使用することで数多くのERαバリアントが産生されることを発見した。特にイントロン領域に存在する新規中間エクソン・終末エクソンの選択的使用により、C末端欠損型ERαバリアントが生じ、バリアントの一部はリガンド非依存的に活性化することが判明した。さらに、急性効果を担う受容体候補として従来からエクソン1が欠損することによって生じるN末端欠損型ERαバリアントが知られていたが、このバリアントをコードする多数の新規mRNAバリアントをヒトの中枢神経系を含む多数の組織で発見した。 記憶・学習の中枢である脳海馬では女性ホルモンであるエストロゲンといった性ステロイドホルモンを神経細胞が合成することを示していたが、さらにストレスステロイドホルモンであるグルココルチコイドも合成することを発見し、性ステロイドホルモン・ストレスステロイドホルモンが、自己・傍分泌様に分泌され急性的に神経細胞に作用し、神経情報伝達を調節することを示した。その際、エストロゲンの急性作用を媒介する受容体は、核外に存在する従来型のERαまたはERα様のタンパク質であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト・マウス・ラットERα遺伝子構造の再検討がほぼ終了した。予想に反して、多数の新規バリアントを同定したが、それらバリアントの機能解析も順調に進展している。さらに、記憶・学習の中枢である脳海馬を用いた実験から海馬でエストロゲン急性効果を担う受容体が従来型のERαまたはERα様のタンパク質であるとの示唆が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、計画段階では予測していなかったほど多数のERαバリアントが存在していることが判明し、それら多数のバリアントがどのような特性を持つか解析を行う必要がある。 記憶・学習の中枢である海馬で急性作用を担う受容体が従来型のERαまたはERα様のタンパク質である可能性がますます強くなっているが、今回発見したバリアントと急性作用を担う受容体との対応関係が不明瞭である。そのため、バリアントの機能解析をすすめるとともに海馬の急性作用を担う受容体の分子特性をさらに詳細に調べる必要がある。
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