研究課題/領域番号 |
22790232
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
長谷 都 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (20450611)
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キーワード | 妊娠 / 出産 / 子育て / ER α / 海馬 / 学習・記憶 / シナプス |
研究概要 |
本研究では、妊娠-出産-子育て後から長期間維持される、学習、記憶における行動変化を、産後のERα免疫陽性細胞数の増加およびERαを介した海馬の神経発達およびシナプスの形成に着目して、そのメカニズムの解明をラットを用いて行う。当該年度の研究では経産ラットおよび未経産ラットを用いて、妊娠-出産-子育て後にみられる学習、記憶行動の変化と、海馬のシナプスの形成への影響を明らかにする。海馬依存的な学習実験であるモリス水迷路では、経産ラットと未経産ラットでは有意な差は見られなかったが、Y迷路では未経産ラットと比較して経産ラットは好成績であった。シナプスの形成に関しても、経産ラットにおいて樹状突起のスパインの密度が高いことがわかった。これらの結果から、妊娠-出産-子育ての経験が、海馬内の神経回路を変え海馬依存的な行動の変化をもたらした可能性が示唆できる。また、これらの変化がERαを介しているかどうかは、次年度の計画へ組み込む予定である。妊娠-出産-子育て後にみられる学習、記憶の向上がシナプスの形状や、密度の変化による結果であり、その結果をもたらすキーになる因子が、妊娠-出産-子育てを経験することで多く産生されるとすれば、学習、記憶に障害をもたらす疾患への創薬にもつながることが期待できる。ERαの変化、またはERαを介したメカニズムの変化を注目して研究を行っているが、本年度内ではまだ明らかにできていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ERαを介したメカニズムの解明のための、薬理学的な実験があまり順調にできていないが、おおむね行動学的組織学的な研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
妊娠-出産-子育てによる行動学的、組織的な変化が明らかになってきたので、薬理学的なアプローチを進めることと、パッチクランプ法で神経細胞そのものの機能的変化を観察できたらと考えている。行動、神経構造の変化が海馬内の機能にいかなる影響を及ぼしているのかをあきらかにしていきたい。海馬内の機能における変化を新たに研究計画へ入れることによって、その結果が、妊娠-出産-子育てによる行動学的な変化を説明する上で重要なツールになることを期待している。
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