産後性周期が回帰した後の産後5週間目の非発情期ラットでは、不安様行動やうつ様行動の回復がみられる他、同週齢の非発情期未経産ラットと比較して、海馬(CA1)、歯状界(DG)におけるエストロジェンレセプターα(ERα)免疫陽性細胞数が多いことを先行研究で明らかにしている。本研究では、妊娠-出産-子育て後から長期間維持される、学習、記憶における行動変化を、産後のERα免疫陽性細胞数の増加およびERαを介した海馬の神経発達およびシナプスの形成に着目して、そのメカニズムの解明をラットを用いて行った。その結果、海馬のシナプスの形態には経産と未経産ラットでは、有意な差はみられなかった。行動解析では、経産ラットは、未経産ラットと比較してY迷路テストにおける空間学習にて良好な成績であった。モリス水迷路では、2群間に有意な差はみられなかった。本研究課題により、経産および未経産ラット間の空間学習による成績の違いは、海馬内の神経およびシナプスの形態変化によるものではない可能性が明らかとなった。
|