コミュニケーションボックス法による心理的ストレス(恐怖及び不安)暴露を行い、性機能に関連した行動を観察しその影響を調べた。 方法:5週齢のC57BL/6J系雄性マウスを用いた。コミュニケーションボックスを用いた恐怖および不安暴露:1日30分x 3回のスケジュールで2週間、0.3mAの間欠ランダム電気刺激をダミーマウスに負荷した。電気刺激によるダミーマウスの鳴き声、激しい跳躍、尻尾による威嚇行為に実験対象マウスを曝すことによって心理的ストレスを負荷した。ストレス負荷後、実験対象マウス(7週齢)の行動薬理学的検討(オープンフィールド試験、社会性行動試験、性行動試験(マウンティング、挿入、射精の一連の行動開始時間や継続時間の計測)、新奇物体認知試験)を行った。 結果及び考察:オープンフィールド試験では、有意な変化は認められなかった。社会性行動試験:相手が雄性の場合、暴露群と非暴露群で有意な差は認められなかった。一方、相手が雌性の場合、非暴露マウスの雌性マウスへの接触潜時は延長する傾向が認められたが、有意ではなかった。このことは通常、性的にも成熟した雄性マウスは雌性マウスに対して興味を示すが、ストレス負荷によって興味が薄れている傾向があると考えられる。そこで次にホルモン処置した雌性マウスに対する恐怖及び不安暴露の影響について、性行動を指標に検討した。性行動試験:恐怖及び不安暴露した雄性マウスの雌性マウスへの接触およびマウンティング潜時は非暴露マウスと比較して有意に延長していた。このことから恐怖及び不安暴露された雄性マウスは雌性マウスに対する興味が低下したと考えられる。以上のことから、身体的ストレスだけでなく、コミュニケーションボックス法を活用した恐怖および不安暴露によって、雄性マウスの性行動が障害される可能性が示唆された。
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