前年度では、MYPT1ホスファターゼの候補として、1型セリン/スレオニンホスファターゼの触媒サブユニットであるPP1cδを同定した。平成23年度では、培養平滑筋細胞(SMC)を用いて、PP1cδを過剰発現させたときのMYPT1のリン酸化状態の変化を検討した。SMCを100nMのendothelin-1(ET-1)で刺激すると、MYPT-1のSer696のリン酸化が刺激前に比べて約4倍上昇した。組替えアデノウイルスを用いて、EGFPとPP1cδの融合タンパク質を過剰発現させたSMCを用いて同様の実験を行ったところ、ET-1刺激によるMYPT-1のリン酸化が抑制されることが明らかとなった。また、EGFP-PP1δの発現量を増大させるとリン酸化の抑制も強くなった。これらの結果から、ET-1刺激によってリン酸化されたWPT-1のSer696を、EGFP-PP1cδが即座に脱リン酸化しているものと考えられた。次に、MYPT-1の脱リン酸化がMLCPによる自己脱リン酸化である可能性を検討するために、チオリン酸化したMYPT-1を固定化したビーズ(tp-MYPT beads)を用いてpull-down assayを行った。その結果、PP1cδとともにMYPT-1がtp-MYPT beadsに結合していることが明らかとなった。以上の結果から、MLCP自身がMYPT-1を脱リン酸化することでMLCPの活性化を引き起こしていることが示唆された。現在、RNAiによってPP1cδをknock-downしたときのMYPT-1のリン酸化状態と、一酸化窒素やcGMP処理による影響を検討中である。
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