血管攣縮性動脈硬化にSphingosyl phosphorylcholine(SPC)が関与するのかを検証するために、Boyden chamber法によるSPCに対するモルモット脳底動脈平滑筋細胞(Gba-SM4)の遊走能を調べた。その結果、SPCへの遊走能を示す多孔性膜透過率が増加した。このことから、SPCは血管攣縮に関与することが示唆された。SPCの作用によって平滑筋細胞にどのような影響があるのかを検証するため、SPCを作用させたGba-SM4細胞に蛍光免疫染色を施し、共焦点レーザー顕微鏡観察によってアクチン細胞骨格とミオシンとの局在関係を調べた。Gba-SM4にSPCを作用させるとアクチン細胞骨格であるストレスファイバーが増強されるとともに細胞膜領域ではマグナポディアと呼ばれる毛羽立った特殊な細胞突起が出現した。マグナポディアの出現頻度を解析した結果、マグナポディアの出現率と遊走能の増加には相関関係が確認された。マグナポディアの出現を遊走能の上昇、もしくは血管攣縮の現象として認められたため、SPCによる遊走能亢進の際の分子的作用機序を検討することにした。G蛋白質の阻害剤であるPT-x、p38の阻害剤SB203580、rhokinaseの阻害剤Y-27632、さらに情報伝達の出口に相当するミオシンの阻害剤BlebbistatinをSPCに共添加し、SPCの情報伝達阻害をマグナポディアの出現率として検証した。その結果、最下流のBlebbistatinの共添付では完全なマグナポディア出現減少が確認されたが、SPCとPT-x、もしくはSB203580の共添加においマグナポディアの出現が残存したことから、複数の作用点もしくは他経路経由の作用が推測された。
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