抗酸化剤が新規抗精神病薬としての候補薬剤となるのかを調べるために、統合失調症の周産期障害仮説に基づく動物モデル(幼若期EGF投与モデル:生後2日から10日齢のラットにEGFを皮下投与)の例数を増やし、実験に使用した。これらのモデルラットを用いて認知機能への薬物効果を測定した。投与薬剤は、活性酸素の抑制効果を持つ抗酸化剤であるエダラボン1、10mg/kg/dayで、この薬剤をモデル動物へゾンデを用いて経口投与を行った。7日間の投与後の8日目以降に行動試験を行った。対照群として溶媒注入群を同様に実施した(各10匹)。 これらのモデル動物ではプレパルスインヒビションの障害が見られた。続いて、抗酸化剤エダラボンの経口慢性投与後にプレパルスインヒビション測定を行った。その結果、10mg/kg/day投与でプレパルスインヒビションの異常に対して改善効果が得られた。低濃度の慢性投与や高濃度の単回投与の場合は、改善効果が認められなかった。次に、エダラボンの経口慢性投与後に社会性行動試験を行った。その結果、プレパルスインヒビション障害に対してと同様に改善効果が得られた。低濃度の慢性投与や高濃度の単回投与の場合は、改善効果が認められなかった。一方で、エダラボンの経口慢性投与後の体重と運動量(運動距離と垂直運動)に変化は見られず、副作用に対する抗酸化剤の影響はなかった。 別種の抗酸化剤であるトロロックス1、10mg/kgの経口慢性投与後のプレパルスインヒビションと社会性行動試験を行った(各10匹)。その結果、高濃度の投与で改善効果は認められた。しかしながら、10mg/kgの単回投与では改善しなかった。脳内のどの領域で抗酸化レベルが抑えられたかを解析したが、特定できなかった。以上の結果から、抗酸化剤が周産期障害仮説に基づくモデル動物に対して脳内に作用し、モデル動物の認知機能障害を改善することが認められた。
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