初年度である平成22年度はTRPM4イオンチャネルのモデルとその活動電位への影響と、TRPM4チャネル阻害の薬物効果の検討を行った。心房細動をはじめとする不整脈のトリガーの機序として、筋小胞体からのCa2+放出による脱分極がある。従来の研究では、ナトリウムカルシウム交換輸送体が細胞内Ca2+濃度の上昇を探知して、膜電位を脱分極させると説明されていた。しかし、ナトリウムカルシウム交換輸送体は心室のみならず多種多様な細胞に存在し、ナトリウムカルシウム交換輸送体の阻害を心房細動を抑える機序としては使用できない。一方、近年TRPM4チャネルがヒト心房筋細胞で大きな役割を果たしている可能性が示唆されている。本研究グループが予備研究で用いたCourtemancheらのモデルを使用して、TRPM4イオンチャネルとその活動電位への影響の検討を行った。TRPM4チャネルの細胞内カルシウム依存的活性化がモデルの中に取り込まれているために、生理条件下の静止膜電位でもある程度脱分極しているが、脱分極を引き起こす程度ではなかった。しかし、頻脈時に細胞内の筋小胞体からカルシウムが漏れてくる時に遅延後脱分極を引き起こすことが解析により分かった。しかし、TRPM4は複数のイオンを通すために、その等価電位は0mvに近く、あくまで興奮の閾値を超すこと役割しか果たさないことも分かった。さらに、TRPM4イオンチャネル阻害の薬物効果のモデル化として、TRPM4イオンチャネルのモデルを用い、TRPM4イオンチャネル阻害の薬物効果のモデル化を心房筋細胞に入れ解析を行った。その結果、遅延後脱分極は頻脈時に起きることから、理想的な特性は頻脈時に効果が大きくなる薬物プロファイルが理想的であろうと推測された。
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