本年度は共焦点顕微鏡を用いて単離肺静脈心筋細胞および心房筋細胞のCa^<2+>イメージングを行い、細胞内Ca^<2+>オシレーションによる肺静脈自発活動の発生機序の解明を目指した。まず肺静脈心筋細胞および心房筋細胞の細胞単離法を確立し、安定的に細胞を単離することに成功した。肺静脈心筋細胞と心房筋細胞の形態的比較を行ったところ、両者のサイズや形態は類似していた。また、Ca^<2+>放出の引き金となる筋小胞体の量や分布にも心房筋と肺静脈心筋で違いは見られなかった。次にこれらの細胞のCa^<2+>動態を比較し、検討を行った。肺静脈心筋細胞では、Ca^<2+> transient、Ca^<2+> spark、Ca^<2+> waveの3種類のCa^<2+>オシレーションが観察できた。Ca^<2+> transientとは活動電位発生に伴う細胞質全体のCa^<2+>濃度上昇である。Ca^<2+> sparkは細胞質内の微少領域で生じる非伝播性のCa^<2+>濃度上昇、Ca^<2+> waveは局所的なCa^<2+>濃度上昇が細胞質内を伝播する動きであり、これらは活動電位の発生を意味しない。肺静脈では自発的なCa^<2+> transientすなわち自発活動の直前にCa^<2+> sparkやCa^<2+> waveが発生している傾向が見られた。この3種のCa^<2+>オシレーションの発生率を心房筋細胞と肺静脈心筋細胞で比較してみると、Ca^<2+> spark、Ca^<2+> waveは心房、肺静脈で同程度発生していたが、Ca^<2+> transientは肺静脈心筋細胞で多く発生していた。 以上の結果より、肺静脈心筋にはCa^<2+> spark、Ca^<2+> waveによりCa^<2+> transientすなわち自発活動が誘発され易い性質があることが示唆された。
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