研究課題/領域番号 |
22790262
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
行方 衣由紀 東邦大学, 薬学部, 講師 (30510309)
|
キーワード | 肺静脈心筋 / カルシウム / イメージング / 自動能 / 心房細動 |
研究概要 |
肺静脈心筋は電気的に不安定であり自発活動を示すことが知られている。肺静脈での異常な電気的興奮が心臓に伝わると心房細動などの不整脈になることが示されており、肺静脈の性質を明らかにすることは重要である。私はこれまでにモルモット肺静脈心筋で電気的自発活動を観測し、この自発活動が筋小胞体からのCa^<2+>放出とNa^+/Ca^<2+>交換機構(NCX)によって惹起されていることを明らかにした。しかし、なぜ肺静脈でのみこのような自発活動が見られるのかは分かっていない。そこで本年度は、ガラス微小電極法、patch-clamp法、共焦点レーザー顕微鏡法を用いて左心房筋と肺静脈心筋を比較し、肺静脈で自発活動が発生する原因を明らかにすることを目的とした。 左心房筋と肺静脈心筋から心筋細胞を単離し、細胞形態、筋小胞体の量や分布を観察したところ、左心房と肺静脈心筋で違いは見られなかった。次にCa^<2+>動態を観察した。心筋細胞のCa^<2+>の動きには、活動電位に伴うCa^<2+>transient、それ以外のCa^<2+>spark、Ca^<2>+waveがある。肺静脈心筋では左心房に比べ、Ca^<2+>transientが多く発生していたが、Ca^<2+>spark、Ca^<2+>waveのみを示す細胞の割合は同程度であった。このことから、肺静脈心筋にはCa^<2+>transientすなわち活動電位が発生しやすい性質があることが分かった。肺静脈と左心房の活動電位波形を比較すると、肺静脈心筋で静止膜電位が浅い傾向が見られた。そこで静止膜電位を維持する内向き整流性K^+電流量を測定した。内向き整流性K^+電流量は肺静脈で小さく、左心房で大きい傾向が見られた。 このことから、肺静脈心筋では再分極を担う内向き整流性K^+電流量が小さいために筋小胞体からのCa^<2+>放出とNCXによる自発活動が顕在化し得ることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は肺静脈心筋の電気的自発活動と細胞内カルシウムオシレーションとの関係を解明し、心房細動に対する新規薬物治療戦略を構築することを目的としている。本年度では肺静脈心筋では再分極を担う内向き整流性K^+電流量が小さいために筋小胞体からのCa^<2+>放出による自発活動が顕在化し得る結果を得ており、電気的自発活動と細胞内カルシウムオシレーションとの関係を一部明らかにすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は肺静脈自発活動の更なる機序解明のため、活動電位と細胞内カルシウム濃度変化を同時計測し、薬理学的手法と組み合わせた詳細な検討を行う予定である。また24年度は肺静脈心筋自発活動に影響を与えると考えられる神経伝達物質、ホルモン、病態の視点も取り入れ、電気的自発活動と細胞内カルシウムオシレーションとの関係の解明に繋げる。
|