研究概要 |
肺サーファクタントは呼吸に必須の生理活性物質であり、肺胞を構成する肺胞2型上皮細胞で産生されることが知られているが、小胞体で産生された肺サーファクタント脂質がどのようにしてサーファクタントを封入しているオルガネラであるラメラ体へと運ばれるのか、その詳細な分子機構は明らかにされていない。そこで、本研究は肺サーファクタント輸送タンパク質の同定とその分子機構の解明を目的として行った。 肺サーファクタント脂質は出生直前に合成されはじめる為、その輸送タンパク質の発現も出生直前に誘導されると仮説を立て、胎生14日目のマウスのExpressed sequence tag (EST)ライブラリーと出生直後のESTライブラリーをNCBIのデータベースを用いて比較し、出生直後のライブラリーにのみ存在する遺伝子のうち、脂質輸送ドメインを持つものを探索した。その結果、脂質輸送ドメインを持ち、同じファミリーに属する生理機能未知の2つの遺伝子(遺伝子X1, X2)を同定した。 タンパク質X1, X2は、マウスにおいて肺組織で高い発現を示し、胎生14日から出生にかけて発現が誘導されていた。またタンパク質X1, X2は肺組織の中でも特に、肺胞2型上皮細胞に主に発現しており、その肺での発現はマウスの気道過敏性モデルにおいて減少することが明らかとなった。 さらにタンパク質X1, X2の細胞内での機能を詳細に解析するため、タンパク質X1, X2を大腸菌に発現させた後、精製することに成功した。更なる解析の結果、精製したタンパク質X1, X2はサーファクタント脂質の主成分であるDisaturated Phosphatidylcholineと結合することが明らかとなった。 これらの結果は、タンパク質X1, X2が肺サーファクタント脂質の輸送または産生、分泌に重要な役割を持つことを示唆していると考えられる為、現在さらに詳細な解析を試みている。
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