肺サーファクタントは呼吸に必須の生理活性物質であり、肺胞を構成する肺胞2型上皮細胞で産生されることが知られているが、小胞体で産生された肺サーファクタント脂質がどのようにしてサーファクタントを封入しているオルガネラであるラメラ体へと運ばれるのか、その詳細な分子機構は明らかにされていない。そこで、本研究は肺サーファクタント輸送タンパク質の同定とその分子機構の解明を目的として行った。 前年度に同定した、肺サーファクタント輸送タンパク質の候補であるタンパク質X1とX2について、さらなる機能解析を行った。解析の結果、タンパク質X1とX2はともにGTPase/ATPase活性を有することが明らかとなった。GTPase活性は分子輸送の際のスイッチとなることが知られているため、タンパク質X1についてGTP結合型とGDP結合型により、リン脂質との結合能が変化するかを解析した。その結果、GTPの非加水分解アナログであるGTPγSとプレインキュベーションを行った際、リン脂質への結合が増強するという結果を得た。 また、タンパク質X1はタンパク質との相互作用を行うドメインも有している為、その結合タンパク質を肺組織からのタンパク質X1との共免疫沈降とMALDI-TOF MSを用いた実験により同定した。 これらの結果はタンパク質X1のリン脂質への結合と解離のスイッチをGTPもしくはATPが担っており、また、他のタンパク質と相互作用することでサーファクタント脂質を輸送している可能性を示している。現在、タンパク質X1の更なる機能解析を試みている。
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