研究概要 |
低酸素コンプレックス構成分子PRP19の機能解析 プロリン水酸化酵素PHD3が形成する低酸素コンプレックスの構成タンパク質として、これまでにPRP19を同定してきた。本研究では、低酸素応答におけるPRP19の働きと、その発現制御機構を解析した。 PRP19由来ペプチドを用いた低酸素コンプレックスの阻害 PRP19が低酸素依存的にPHD3と結合するのに必要なN末端側領域のペプチドを発現するベクターを作成した。このペプチドを細胞内に発現させたところ、ペプチドの発現量依存的に、低酸素コンプレックスの中核をなすPHD3-PRP19の結合が阻害されることが明らかになった。さらに、このペプチドは容量依存的に低酸素下におけるHlF-1α,HlF-2αの発現を阻害することが明らかになった。また、このペプチドを乳癌細胞株MCF7に導入したところ、細胞増殖を抑制する活性を示した。この細胞からmRNAを抽出して、癌転移に関与するマトリックスメタロプロテアーゼの発現を検証したところ、発現が有意に減少していることが判明した。以上のことから、PRP19ペプチドは低酸素コンプレックスを競合的に阻害して、低酸素性の癌の活性を阻害できることが示唆された。 PRP19の低酸素下における発現抑制機構 PRP19 mRNAの発現が長期の低酸素下で減少することをこれまでに見出してきた。PRP19の発現を負に制御する機構を明らかにするためにルシフェラーゼアッセイを用いたプロモーター領域の解析を進めた。転写抑制に働く最少領域を決定するために、プロモーター領域を段階的に削除したところ、転写開始点の上流130bpまでの領域に転写抑制部位が存在することが示唆された。その領域に結合しうる転写因子をデータベースと照合して探索したところ、STAT、GATA、Elkなどの転写因子が候補分子として同定された。これらの因子が低酸素下でどのような遺伝子群の発現を制御するのかを、今後明らかにしていきたい。
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