私はこれまで、Ras-association domain family(RASSF)のひとつであるRASSF6が強い細胞死誘導能を持つこと、細胞死と細胞増殖の調節に機能するHippoシグナルと関係していることを明らかにした。RAssF6とHippoシグナルは静的条件下では互いを抑制しあうが、ひとたびHippoシグナルが活性化すると互いに独立して細胞死を誘導するようになる。Hippoシグナルを介する細胞死については解析が進んでいる一方で、RASSF6がどのように細胞死を誘導するかはよく分かっていない。そこで、本研究ではRASSF6の細胞死誘導機構の解明を主眼として研究を行っている。 昨年度までの研究から、RASSF6により誘導される細胞死がp53を介していることを示唆するデータを得た。そこで、本年度はRASSF6による細胞死がp53とどう関係しているかを詳細に解析した。p53の発現を抑制した細胞やp53を欠損した細胞株にRASSF6を発現させて細胞死の解析を行い、RASSF6が引き起こす細胞死にp53が確かに関与することを明らかにした。p53はDNA損傷後の応答に関わるため、紫外線によりDNA損傷を起こした細胞の細胞死を調べ、RASSF6の発現抑制により紫外線照射後の細胞死が阻害されることを明らかにした。また、紫外線照射後に見られるp53タンパク質の増加がRASSF6をノックダウンした細胞では認められなかった。その機構として、RASSF6がMDM2と結合し、p53の安定性を制御していることを示唆するデータを得た。紫外線照射により、p53下流で細胞死誘導に関わるPUMAやBaxの発現が誘導されるが、RASSF6の発現を抑制した細胞ではこれらの遺伝子発現が減少していることをリアルタイムPCRにより確認した。以上の結果を論文としてまとめ、研究代表者が在職中に専門科学誌に投稿した。
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