オートファジーは細胞内の主要な分解システムであり、飢餓応答・細胞内浄化・免疫など様々な生理現象に重要である。本研究課題では、①Tet-offシステムを利用した時期特異的Atg5ノックアウトマウス、②神経特異的Atg5レスキューマウス(神経のみAtg5を発現させたAtg5ノックアウトマウス)を作製し、これらのマウスによりオートファジーの栄養学的意義を解析する。 ①のTet-offマウスは、トランスジェニックマウスを作製したが十分なAtg5の発現を得ることができなかった。これはtTAの発現が弱かったためと考えられる。よってこのマウスの作製は中断となった。 ②の神経特異的レスキューマウスは、重篤な貧血・精巣卵巣の異常・肝膵の肥大など様々な異常を示した。このマウスは血中鉄濃度が低く、鉄代謝にオートファジーが関与することが示唆された。このモデルマウスは様々な異常を示すため、このモデルのみでは栄養代謝学的解析が難しいと考え、栄養代謝に重要な肝臓特異的Atg5ノックアウトマウス(Atg5flox;Mx1-Cre)も導入した。このマウスの肝メタボローム解析を行ったところ、解糖系とβ酸化に異常があることが示唆された。β酸化関連遺伝子の発現をqPCRで調べたところ、ノックアウトマウスにおいてこれらのmRNAの発現が抑制されていた。また、アセチルCoAに次いでアミノ酸関連代謝産物の変化が大きかったため、アミノ酸について調べた。肝臓内アミノ酸濃度を調べたところ、絶食後6時間でノックアウトマウスの肝臓内アミノ酸濃度が著しく低下しており、オートファジー由来のアミノ酸が絶食時のアミノ酸プールの維持に重要であることが示唆された。このときのノックアウト肝ではタンパク質合成が低下していたことから、肝臓のオートファジーによるアミノ酸供給は絶食時のタンパク質合成に重要であることが示唆された。
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