研究概要 |
Notch/Deltaは両方向性シグナルであり、免疫学分野においてNotchシグナルの研究は数多くあるが、Deltaシグナルの研究は少ない。そこで、末梢CD4T細胞の分化の際にDeltaシグナルがどのように関わるかをNotchシグナルの役割と並べて検討するのが本研究の目的である。 初めに末梢CD4T細胞においてNotch (Notch1-4)およびNotchリガンド(Delta1-like protein (D11) 1, 3, 4, Jaggedl, 2)を発現しているかどうかを脾細胞由来CD4T細胞で検討した。その結果、NotchにおいてはNotch1の発現が強く認められ、Notch2および3はやや弱いが発現が認められた。Notch4については発現が認められなかった。リガンドの発現においてはDll1とJagged2の発現は認められたが、他のリンガンドの発現は検出できなかった。またこれらの細胞を抗CD3抗体と抗CD28抗体で刺激した際にはこれらの分子の発現に大きな変化は認められなかった(刺激後2日目まで検討)。これらの結果から、末梢CD4T細胞はNotch1,2,3およびDll1, Jagged2のシグナルを受ける可能性が示された。 末梢CD4T細胞を抗CD3と抗CD28で刺激(プライミング)する際にNotchもしくはDeltaを発現したCOS7細胞を共存させることでDeltaシグナルおよびNotchシグナルをT細胞に与え、一週間培養後に細胞を回収し、サイトカイン発現を調べることでどのようなヘルパーT(Th)細胞に分化したかを調べた。まず、細胞内サイトカインを染色することで検討したが、IFNγ, IL-4, IL-10, IL-17の発現にはNotchシグナル、Deltaシグナルを与えた細胞群とコントロールの細胞群の間に差異はなかった。また、Th分化の指標となるマスター遺伝子の発現についても検討したが、大きな差は認められなかった。 現在までの結果で大きな差は認められていないが、今後はプライミングを複数回行なうことでの検討や、ある特定のTh細胞分化を誘導する条件下でのNotch/Deltaシグナルの役割について検討を重ねていく予定である。
|