研究概要 |
Notch/Deltaは両方向性シグナルをもつが、免疫分野においてDeltaシグナルの解析は皆無である一方、Notchシグナルの役割についてもはっきりしない部分が多い。本研究では末梢CD4 T細胞の分化に於けるNotchシグナルおよびDeltaシグナルが両方向性シグナルとしてどのような影響を及ぼすかについて、特にDeltaシグナルに着目して検討した。 抗CD3+抗CD28抗体によるT細胞刺激時に安定的にDeltaシグナル、Notchシグナルを付加するため、HEK293細胞を親株にNotchおよびDelta発現HEK293細胞株を樹立し、実験に用いた。 培養にサイトカインを含まないニュートラルな条件ではNotchおよびDeltaシグナルを付加しても大きな差異は見られなかったため、様々なTh細胞誘導条件にNotch, Deltaシグナルを付加して検討を行った。まずTh1およびTh2誘導の培養条件ではNotch, Deltaシグナルを付加しても大きな差異は見られなかった。また、制御性T細胞を誘導する培養条件においても、そのマスター遺伝子であるFoxp3の発現割合に差異は見られなかった。他方、Th17を誘導する条件においてはDeltaシグナルを付加した場合に僅かではあるが、IL-17産生細胞が増加し、逆にNotchシグナルの場合は低下する傾向にあった。制御性T細胞とTh17細胞を誘導する培養条件ではTGFβを添加するが、DeltaシグナルはTGFβシグナル経路の最終段階で働く転写因子Smadの転写活性を増強させることから、Th17においてもTGFβ/Smadシグナルを修飾している可能性が考えられる。Th17分化はSmadに非依存的であるという報告もあるため、Notch/DeltaによるTh17分化メカニズムがSmadに依存するかどうかなどの詳細を今後検討したい。
|