研究課題
スフィンゴ糖脂質(GSL)は、がん細胞や神経細胞で特に重要な役割を果たしており、がんや神経変性疾患などの病態に深く関与している。GSLは脂質ラフトと呼ばれる細胞膜ドメインに局在し、細胞機能の調節に重要な役割を果たしている。しかしながら、GSLの細胞内輸送メカニズムや脂質ラフトへの集積メカニズムはほとんど理解されていない。本年度は、特に、重篤な神経変性疾患を伴うニーマン・ピックC型(NPC)病に関連するGSLについて研究を行い、以下の成果を得た。これまでのGSL輸送研究では、ほとんどすべての研究においてセラミドの脂肪酸鎖が蛍光標識されたモデルGSL (Bodipy-LacCer)が使用されている。Bodipy-LacCerがスフィンゴリピドーシス関連GSLと同じ糖鎖構造・脂質構造を持つ天然型と同一の細胞内動態を示すかどうかは疑問が残っている。申請者らは、この問題を克服し、疾患関連GSLの細胞内輸送をより詳細に明らかにすることを目的に、NPC1欠損CHO細胞に対して糖鎖リモデリングを行った。CHO細胞の主要なGSLはGM3であるので、NPC1欠損CHO細胞と野生型(WT)CHO細胞にGM2/GD2合成酵素(β1,4-GalNAc転移酵素)を導入した結果、GM2だけでなく脳に発現がみられるGM1やGD1aを発現するCHO細胞を得た。そして、NPC1欠損CHO細胞では、GM2やGM1、GD1aがリソソームに強く蓄積することが明らかになった。また、NPC病患者由来の繊維芽細胞においても、GSL(GM3)の蓄積はリソソームへ限局していた。我々の作製したNPC病関連GSLを蓄積する初めてのモデル細胞であり、NPC病におけるガングリオシド輸送を研究する有用なモデルになると考えられる。
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