研究課題
我々はin vitroにおいて、ラットの胎生海馬ニューロンの軸索を切断すると軸索新生が起こる現象を観察した。この研究の動機は、胸髄損傷した後に頚髄の皮質脊髄路から灰白質に向かって分枝が発芽する組織像を観察したことから、これに似た現象をin vitroでも再現できないかと考えたことにある。事実、我々はin vitroで3日間培養し極性を獲得した海馬ニューロンの軸索を切断したところ新しい神経突起が神経細胞体から発芽し伸長することをtime-lapse顕微鏡下にて観察した。新生神経突起は軸索マーカーのTau-1ポジティブとなる一方、切断された軸索はTau-1の発現が弱くなった。これらのニューロンにP50を強制発現させてdynein-dynactin複合体の形成を阻害すると、新生軸索が出来るまで時間が長くかかるようになった。このことから、逆行性軸索輸送が軸索新生に関わっていることを示唆される。さらに軸索切断1時間後にimportinβが切断部位より近位側で発現上昇しているのが観察された。しかも、この発現上昇はCHXによって蛋白質合成をブロックすると完全に抑えられるのに対して、AMDによって転写をブロックしても完全には抑えられなかった。よって、importinβは損傷部位で局所翻訳されることが示唆された。さらにimportinβと逆行性輸送蛋白質のdyneinとの複合体が軸索切断1時間後に増加していることがco-IP法によって確かめられた。以上の結果から、海馬ニューロンでは、軸索が切断されると「軸索が損傷を受けた」という情報を担うimportinβが損傷部位から逆行性軸索輸送機構に乗って細胞体まで運ばれ、新たな神経突起新生につながっていることが示唆された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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