研究課題
炎症応答におけるホスホリパーゼCε(PLCε)の役割について、分子レベル、および個体レベルでの解析を行った。分子レベルでは、ヒト不死化角化細胞(PHK16-0b)を用いた解析を行い、腫瘍壊死因子(TNF)α刺激によるケモカインCCL2(MCP-1としても知られる)のmRNAレベルの上昇が、PLCε依存的であることを見出した。また、このCCL2の発現上昇は、阻害剤を用いた実験などから、NF-κBの活性化を必要とすることが分かった。一方で、NF-κBの核移行や活性化は、PLCεのsiRNAによるノックダウンによる阻害を受けないことから、PLCε非依存的であった。以上のことから、TNFα刺激によるCCL2の発現誘導は、少なくともPHK16-0b細胞においては、PLCεを介するNF-κB非依存的な経路とPLCεを介さないNF-κB依存的な経路の両者が、相乗的に作用して引き起こされることが示唆された。個体レベルでの解析では、卵白アルブミン(OVA)を抗原に用いた気管支喘息モデルを用いた解析を進めた。PLCεノックアウトマウスでは、感作成立後のOVA吸入による気管支炎が抑制されることが分かった。また、野生型マウスで見られたメサコリン吸入に対する気道過敏性の亢進が、PLCεノックアウトマウスにおいて顕著に抑制されていた。さらに、気管支肺胞洗浄液の解析から、PLCεノックアウトマウスでは、各種炎症細胞(特に、好酸球とTリンパ球)の浸潤が抑制されていた。気管支肺胞洗浄液中のサイトカインの定量結果から、IL-4などTh2サイトカインの上昇がPLCεノックアウトマウスで抑制されていた。以上の結果は、PLCεの気管支喘息へ関与を示すものである。さらに、PLCεが、喘息に代表されるTh2反応を伴う炎症応答においても、重要な役割を果たしていることを示唆するものである。
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