研究課題
N-アシルエタノールアミン(NAE)は動物組織中に存在して抗炎症や鎮痛・食欲抑制などの生物活性を示す脂質メディエーターであるが、その生体内における合成や分解に関しては不明な点が多い。本研究課題において平成23年度は、NAEの分解に関わるリソソーム酵素であるNAE水解酸性アミダーゼ(NAAA)に着目して以下の成果を得た。まず、NAAAの阻害剤として脂溶性アミンであるペンタデシルアミンやトリデシル2-アミノ酢酸を開発した。50%阻害濃度はそれぞれ5.7μMと11.8μMであり、阻害様式は競合的であった。両化合物ともに、NAAAのアイソザイムである脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)に対する阻害活性は認められず、さらに活性の強い特異的阻害剤を開発する際の骨格として有用であると考えられた。さらにNAAA活性を促進する内因性分子として、コリンもしくはエタノールアミンを含有するリン脂質やジヒドロリポ酸を見出し、リソソーム内でこれらの生体分子がNAAAの活性化に貢献する可能性が示唆された。また、FAAH欠損マウズの種々の臓器におけるNAAAの遺伝子発現に関して検討を行ったが、野生型と比べて発現レベルに差は見られず、当該欠損マウスにおけるNAAAの代償的な上昇は認められなかった。併せて脳におけるNAEの生合成経路の解析を行い、これまでに検討されてきたO-ジアシル型だけでなく、O-アルケニルアシル型(プラスマローゲン型)のN-アシル化エタノールアミンリン脂質もNAEの前駆体となることを明らかにした。
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