申請者は、低親和性のロイコトリエンB4受容体として同定されたBLT2の生体内リガンドが、シクロオキシゲナーゼ代謝物である12(S)-ヒドロキシ-ヘプタデカトリエン酸(12-HHT)であることを発見し、その生理機能の解明を行っている。 12-HHTはシクロオキシゲナーゼ(COX)によるアラキドン酸代謝物であるプロスタグランジン(PG)H2を前駆体として、トロンボキサンA2合成酵素(TxA2S)依存的な経路で生合成されると考えられているが、合成経路については不明な点が多い。そこで質量分析計を用いた12-HHTを含むエイコサノイドー斉定量系を確立し、12-HHTの産生・代謝経路を解析した。 ヒト血液凝固における12-HHT産生は、血液凝固阻害剤ヘパリンによってほぼ完全に抑制されたが、TxA2S阻害剤オザグレルによる抑制は部分的であった。またHEK293細胞にCOX-1またはCOX-2、及びTxA2Sを安定発現させた細胞ホモジネートは、アラキドン酸投与により12-HHTとTxA2を産生した。熱処理及びオザグレルによってTxA2産生が完全た抑制され、12-HHTの産生抑制は部分的であった。従って12-HHTは、TxA2S依存的な合成経路に加えて、非酵素的に合成させることが明らかになった。また熱処理やオザグレル処理を行うと、シャントによるPGD2やPGE2産生量の上昇が観察された。オザグレルは抗アレルギー薬として臨床において多用される薬剤であるが、シャントによるPGD2やPGE2産生の上昇を考慮する必要があることが明らかになった。
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