PIポリアミドは抗生物質デスタマイシンモチーフのDNA副溝へ配列特異的にDNAに結合する人工分子である。このPIポリアミドはTGF-β1やLOX-1、MMP-9といった遺伝子の発現制御に成功している。このPIポリアミドは配列選択性を持つアンチジーンドラッグとして様々な特徴を持つが、配列認識数の制限、認識配列そのものの制限、そして長鎖PIポリアミドの合成の困難さといった問題がある。そこで本申請ではこれまでの合成法を改良し、長鎖ポリアミドの合成法の開発、さらに配列選択性を高める為の設計法を確立することを目的とし、研究に取り掛かった。 その結果、GCリッチな遺伝子配列を持つABCA1(塩基配列5'-AGGCCGGCGGGC)を標的とするユニーク型PIポリアミドABCA1-12(DpβPyImImImβImImβPyImImγPyPyImImβPyImβPyPyImAc)を固相合成法によって合成することに成功した。さらにこのABCA1-12のDNAに対する結合をBiacoreアッセイにより測定したところ、3.0×10^<-7>という良好な結合定数を得た。次にABCA1-12の合成効率を高めるためにPEG-HMPB-レジンを用いてPIポリアミドのブロックユニットの合成を行った。その結果、90%以上の高収率で各種PIポリアミドのブロックユニットを得ることに成功した。さらにこれらのブロックユニットを用いてABCA1-12を合成したところ、40%の収率で合成することに成功した。通常の固相合成法では収率11%であったため、ブロックユニットによる長鎖PIポリアミドの合成効率の大幅な向上に成功した。23年度ではこのABCA1の細胞実験や動物実験によりその薬効を検討する。
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