フォンヴィルブランド因子(vWF)の標識とその解析: 蛍光標識したvWF標的ペプチドを用いて、培養細胞におけるvWFの挙動の可視化を試みたが、十分なvWFの発現量が得られなかった。そこで申請者は、別の培養細胞にあらかじめヒトヒスタミン受容体(HRH1)を安定発現させて、更にvWFを一過的に発現させる方法を採用した。その結果、ヒスタミン処理により、細胞は効率良くまた十分量の野生型及び変異型vWFの産生が可能となり、細胞外へ分泌されたvWF多量体は、さや状につながる構造で細胞表面に蓄積することを確認した。申請者は12種類の変異型vWF発現系を構築しているが、それぞれについて、免疫染色によりその局在を明らかにし、流液中でのvWF多量体の構造変化や分解、そして血小板との相互作用についてその経時変化を観察することが可能となった。変異型vWFのあるものは、vWF特異的分解酵素であるADAMTS13による分解に抵抗性を持ち、流液下での血小板蓄積が増加することが明らかとなった。この実験系の開発は、vWFの血流中における挙動を可視化した点で意義があるといえる。 マウスを用いた解析: 分解抵抗性と血栓形成促進性をもつvWFA2変異体を発現するノックインマウスの作成を試みたが、完成には至っていない。しかし現在、vWF欠損マウスに安全性に優れるプラスミドベクターを利用して、目的の変異型vWFを遺伝子導入する方法を採用して解析を行っている。その結果、切断抵抗性を持つvWFの発現と血栓性血小板減少性紫斑病発症の関連性を明らかにできると期待される。 構造醒析: 野生型及び変異型vWFのX線構造解析により、vWFの挙動と構造の関連を明らかにするため、組換えVwf A2タンパク質の大量精製法を確立し、解析を進めている。
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