【研究成果の内容】ヒト骨肉腫(OS)細胞において、液性因子Wnt5aとその受容体Ror2から成るシグナルの活性化により、細胞外基質分解酵素をコードするMMP-13遺伝子の発現が誘導され、OSの細胞浸潤に寄与することが明らかにされている(Oncogene 2009; 28; 3197)。それを踏まえ、前年度に、骨肉腫SaOS-2細胞において、MMP-13遺伝子発現を制御するWnt5a-Ror2シグナル伝達因子として、Dishevelled2、Rac1およびJNK等をはじめ、多数同定した。今年度、Ror2遺伝子欠損マウス胚(E15.5)の軟骨組織標本を用いて、免疫染色等の解析を行った。Ror2発現陽性の骨組織において、MMP-13発現陽性および上腕部軟骨内骨化が観察された。一方、Ror2遺伝子欠損により、軟骨内骨化が遅れると共に、MMP-13発現が消失していた。骨形成制御におけるRor2シグナルの重要な役割を見出した(j.Biol. Chem. 2012; 287; 1588)。【意義】Wnt5aおよびRor2遺伝子欠損マウスは四肢短小化を呈することが知られていた。本研究により、MMP-13発現を介して、発生段階の骨形成制御を司る(Wnt5a-)Ror2シグナルの重要な役割を初めて明らかにすることができた。【重要性】Wnt5a-Ror2シグナルは発生段階の骨形成制御機構と密接に関連するとともに、本研究の成果は関連分野の研究に重要な知見をもたらし、今後の解析の重要な基盤になると考えられる。
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