本年度は、Regulator of EGF ligands Shedding (RES)として解析を進めてきたアネキシンファミリーの分子が、膜型増殖因子HB-EGFのectodomain sheddingに果たす役割を解析した。siRNA導入によるアネキシンA2のノックダウンが分泌型HB-EGFの産生を促進する一方、アネキシンA8のノックダウンは逆にその産生を抑制することを明らかにした。また、分子間相互作用の解析のため、小麦胚芽蛋白質発現系を用いた蛋白質精製を試み、基質であるアネキシン蛋白質を精製した。しかし酵素であるADAM17は膜貫通ドメインを持つことや分子量が大きいことから精製に至っていない。またアネキシンとの結合はADAM17の細胞外領域が担うため、細胞外領域の一部の精製を試みたが、おそらく立体構造が不完全なため、こちらも精製には至らなかった。これらの蛋白精製に関する技術的問題の改善は今後の課題である。ただし、アネキシンファミリーの分子がHB-EGF以外にも同ファミリーに属するAmphireglin、TGFalpha、epiregulinにも作用することが分かった。これはectodomain sheddingを標的とする薬剤の有効性を検討する分子基盤として考えられる。さらに、これまでに我々が得た知見からに基づいてectodomain sheddingのモデルを考察し、原著論文として発表した。今後さらに心筋細胞におけるこのモデルの有用性を検討する必要がある。
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