研究課題
当研究室では、ロイコトリエンB4(LTB4)に対する高親和性受容体(BLT1)と低親和性受容体(BLT2)の遺伝子欠損マウスを用いた解析を行っている。BLT1は主に血球細胞で発現し、BLT2は皮膚や腸管上皮で発現している。今回BLT2欠損マウスを以下の解析を行った。1)BLT2欠損マウスを用いたDSS誘導性大腸炎モデル BLT2欠損マウスでは、DSS誘導性大腸炎が亢進した。この主な原因として、BLT2過剰発現細胞で細胞間のタイトジャンクション形成が亢進することから、BLT2欠損マウスでは腸上皮におけるバリア機能が低下して腸内細菌が侵入し、炎症が亢進するのではないかと考えられた。この内容は、FASEB Jに報告した。また、腸管上皮にBLT2を過剰発現するトランスジェニックマウスの作製にも成功し、今後同様の解析を行っていく予定である。2)BLT2欠損マウスを用いた皮膚の創傷治癒モデル マウス背側の皮膚を円形にパンチした後、経時的に皮膚の塞がる速度を測定したところ、BLT2欠損マウスで治癒が遅延することが明らかとなった。また、ケラチノサイトの培養細胞(HaCaT)にBLT2を過剰発現させて、スクラッチした時の溝の塞がる速度を観察したところ、BLT2過剰発現細胞でリガンド依存的に溝の塞がる速度が亢進した。また、野性型マウスとBLT2欠損マウスの皮膚を用いたDNAマイクロアレイも行い、BLT2シグナルが傷の治癒に至るまでの過程にどのように関与しているのかを現在解析中である。3)BLT2欠損マウスを用いた大腸がんモデル 発癌誘導物質AOMとDSSを組み合わせた炎症誘導性大腸がんモデルの検討と、生後3ヶ月より腸管に腺腫を自然発症することが知られているAPCmin/+バックグラウンドのBLT2欠損マウスを作製した。今後、本格的に大腸がん発症の様子を観察していく予定である。
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