研究課題
本研究では、ロイコトリエンB4受容体(BLT1,BLT2)の細胞増殖/再生における役割を明らかにする目的で、BLT2遺伝子欠損マウスを用いて下記の三つの項目について解析した。1、DSS誘導性大腸炎モデル:H22年度に本項目の結果をFASEB Jに報告し、研究が終了している。2、皮膚の創傷治癒モデル:H22年度にBLT2欠損マウスでは皮膚の創傷治癒が遅延すること、BLT2は表皮ケラチノサイトに発現しており、BLT2シグナルがケラチノサイトの細胞移動を亢進させることを明らかにした。また、細胞膜から切り出されたアラキドン酸から酵素(COXおよびTXA2S)依存的産生される生理活性脂質(12-HHT)が、ロイコトリエンB4よりも高親和性のBLT2リガンドとして機能し得ることを当研究室から報告している。そこでH23年度、COX阻害剤であるアスピリンの投与やTXA2S欠損の創傷治癒に与える影響を調べところ、両者ともにBLT2を欠損させた場合と同様に治癒を遅延させることが明らかとなった。また、BLT2アゴニストを塗布することで創傷治癒が促進したことから、BLT2アゴニストが糖尿病による創傷治癒不全や褥瘡への治療薬となり得ることが期待される。一方、12-HHT/BLTシグナルが、TNFαの発現を上昇させることで二次的にMMP9の発現を上昇させ、細胞の移動を亢進させていることを明らかにした。3、大腸がんモデル:発がん誘導物質であるAOMとDSSを組み合わせた炎症誘導性大腸がんモデル、家族性大腸腺腫症の原因遺伝子であるAPCがん抑制遺伝子の変異マウスを用いた大腸がんモデルの2種類のモデルを試行した結果、BLT2遺伝子の欠損により大腸ポリープの形成が亢進することが明らかになった。
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