研究課題
若手研究(B)
緑内障は本邦における中途失明原因の第一位であり、失明を予防するためにも発症早期にリスク保因者を選別し治療を開始することを可能にする簡便な血液検査体制(ゲノム診断)の構築が切望されている。我々は、緑内障患者に特有なゲノム配列の違い(バリアント)を同定するために、緑内障の主病型である原発開放隅角緑内障(primary open-angle glaucoma, POAG)のゲノムワイド関連解析(genome-wide association study, GWAS)を世界に先駆けて実施し、POAGに関連するヒト染色体上の3領域に存在する6つのバリアントを同定した(中野ら, PNAS, 106 : 12838-12842, 2009)。一方、本研究の実施期間中に我々以外のグループからもPOAGのGWAS結果が報告され始め、いずれの報告も我々の結果とは異なる染色体領域を提示していた。そこで本研究では、緑内障関連染色体領域の遺伝子発現調節機構に対するバリアントの影響の解析に向けて、統計学的検出力の高いGWASを新たに実施し、真の緑内障関連バリアントの同定を目指した。まず、2005年以来本学附属病院にてインフォームド・コンセントを得て収集している臨床検体の中から2, 126検体を選別し、全ゲノムにわたる906, 600個のバリアントのジェノタイプを決定した。次に、臨床診断情報に基づきPOAG群833例と非緑内障対照群686例を厳選し、653, 519個の高精度なジェノタイプデータを抽出して相関解析を実施した。加えて、POAG群を眼圧測定値により高眼圧群(high pressure glaucoma, HPG ; 330例)と日本人POAG患者の90%以上が分類される正常眼圧緑内障(normal pressure glaucoma, NPG ; 503例)の2群に分けた場合についての相関解析も実施した。POAGのGWASの結果、新たにヒト染色体の9p21領域に存在するCDKN2B-AS1上にボンフェローニ補正を超える有意なバリアントを5つ同定した。また、POAG群をHPG群とNPG群に分けて解析した結果、POAG群と完全に一致するCDKN2B-AS1上のバリアントがNPG群でのみ有意に検出された。従って、CDKN2B-AS1上のバリアントは視神経乳頭の脆弱性など眼圧の高さによらない発症メカニズムに関与し得ることが示唆された。一方、9p21領域は遺伝子砂漠でありCDKN2B-AS1もノンコーディング遺伝子であることから、今後本領域を精査していくことで緑内障の病態との関連性を追究していきたいと考えている。
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