申請者は、マイオスタチンの筋線維安定化制御メカニズムについて明らかにするために、(1)マイオスタチン欠損マウスの骨格筋プロテオミクス解析、(2)マイオスタチン欠損マウス(MSKO)と筋ジストロフィーモデルマウス(mdx)の交配マウス(MSKO/mdxマウス)の組織形態解析を行なった。プロテオミクス解析について、平成23年度は前年度に確立した実験方法に加え、微量タンパク質の濃縮法を用いた精製法の詳細な条件決定を行なった。その結果を用い野生型マウスと筋肥大マウスの骨格筋タンパク分子の変動を解析した所、タンパク質の存在量の変動が確認された。質量分析器を用い変動分子の同定を行なった結果、代謝関連因子の変動が新たに明らかになった。マイオスタチン欠損マウスのプロテオミクス解析の結果から、マイオスタチン欠損マウスの骨格筋では解糖系の代謝が亢進しているという結果が得られた。(2)MSKO/mdxマウスの筋組織形態解析から、MSKO/mdxマウスにおいてもmdxと同程度の割合で筋線維の再生が確認された事から、筋線維の変性はMSKO/mdxマウスでも同程度起こっていることが明らかになった。しかし、筋線維数、筋線維面積の増加により筋組織重量は増加しそれにともない筋力の向上が確認された。MSKO/mdxマウスでは筋線維の崩壊はmdxマウスと同様に生じるが、骨格筋量の増加が筋ジストロフィー症状の緩和に働いているという事が明らかになった。マイオスタチンは、骨格筋量を制御している。今後は、マイオスタチン欠損により著しく増大した骨格筋が生体内へ及ぼす影響について解析を進めていく。本研究中に構築した、骨格筋のプロテオミクス解析の手法をもちいて、骨格筋分泌因子の探索を行うことで骨格筋と他臓器との関わりについて明らかにしていく予定である。
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