研究概要 |
脂肪性肝炎発症との関連が示唆される転写因子Nrf1の活性制御機構の解析から、Nrf1の結合因子としてβ-TrCPを同定した。β-TrCPのノックダウンはNrf1の核内における安定化をもたらすことを見出した。さらに、Nrf1中のβ-TrCP結合モチーフを同定し、このモチーフ内に存在するセリンをアラニンに置換した変異体が野生型に比べて安定性・転写活性化能が高いことを見出した。このことは、Nrf1分解および活性化制御にリン酸化が関与していることを強く示唆している。以上の成果はMolecular and Cellular Biology誌に掲載された(Tsuchiya et.al.(2011)Mol.Cell.Biol.31,4500-4512)。 また、Nrf1活性制御因子としてタンパク質キナーゼCK2を同定し、CK2のノックダウンによりNrf1の標的遺伝子であるプロテアソーム遺伝子群の発現が亢進することを見出した。さらに、CK2がin vitroにおいてNrf1の497番目のセリンを特異的にリン酸化することを明らかにし、このセリンをアラニンに置換したNrf1変異体(Nrf1-S497A)は野生型よりも転写活性化能が高いことを見出した。これらの結果はCK2がNrf1の転写活性の負の調節因子であることを示唆している。また、CK2のノックダウンおよびNrf1-S497Aの強制発現は細胞内26Sプロテアソームの活性を上昇させることを見出し、Nrf1-S497Aの強制発現はユビキチン化タンパク質の凝集体形成を抑制することを示唆するデータを得た。 これらの成果は、脂肪性肝炎や神経変性疾患などで見られるユビキチン化タンパク質の分解異常および凝集体形成についての新たな知見をもたらすとともに、Nrf1のリン酸化が凝集体形成抑制の新たなターゲットとなる可能性を提示している。
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