研究課題
本研究では、APP代謝と糖鎖の関連の解明および、アルツハイマー病の新たな治療・予防法への応用を目的としている。これまでに、家族性ADで見られる家族性変異型APP、および正常型APPのN型糖鎖の構造解析により変異型APPではbisecting GlcNAc構造を持つ糖鎖が顕著に増加していることを明らかにしている。また、アルツハイマー病患者脳でbisecting GlcNAcを合成する糖転移酵素GnT-IIIのmRNAの発現が増加していた。そこで、bisecting GlcNAcを合成する糖転移酵素GnT-IIIとAPP代謝との関連について検討したところ、GnT-IIIによるセクレターゼを介したAB産生抑制作用があることを明らかになっており、治療への応用が考えられた。そこで本年度は、GnT-IIIの発現を誘導する化合物の探索を試みた。Neuro2a細胞(マウス神経芽細胞腫)に食品成分などのさまざまな天然化合物を添加し、GnT-III mRNAの発現量をリアルタイムPCR法により調べたところ、ポリフェノールの一種であるクルクミンにGnT-IIIの発現増加作用がある可能性を見いだした。この成果はアルツハイマー病の新たな予防および治療法開発への応用が期待できる。今回、クルクミンの有効性を示したが、構造異性体により効果が異なる可能性が示唆されており、これについて検証を進めたい。また、ポリフェノールを中心に他の化合物についてもスクリーニングを行っている。
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