稀なヒト劣性遺伝性疾患であるMicrophthalmia with limb anomalies(MLA)は、眼球低形成と四肢の形成異常を主徴とする常染色体劣性遺伝性疾患である。沖縄、レバノン、トルコから貴重なMLAの家系4家系を解析する機会を得て、高密度SNPアレーを用いた連鎖解析を行い、候補遺伝子領域の特定から3家系に於いて責任遺伝子SMOC1のホモ接合性変異を特定した。本研究は、Smocl異常を呈するマウスモデルの解析からMLAの病態解明を行うことを目的とした。まずSleeping beauty systemにより作成されたトラップマウスでSmocl異常が報告されているマウスを入手し、遺伝子トラッピングを詳細に観察した。この結果入手したマウスはSmocl部位以外にさらに異なる3箇所の異常を認めたため交配によりSmocl異常のみを有するマウスを単離した。このSmoclトラップマウスモデルの解析において同マウスでMLA患者で特徴的な視神経の形成不全と小眼球症、および合指症や腓骨の低形成などの四肢形成異常が高頻度に認められた。またモデルマウスの四肢発生に於いてBMPシグナルの減少(異常)が、趾間部での細胞死の減少をもたらし、これが合指症の原因となっている可能性が強く示唆された。本研究でこれまで機能の詳細が不明であったSMOC1が、ヒト及びマウスの正常な眼・手足の形成に必須であることが判明した。
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