ダウン症候群などにみられる減数分裂時の染色体不分離による染色体異常の出現頻度は、母親の年齢が上がるにつれて増加する傾向にあることがよく知られている。近年、女性の出産年齢も高齢化していることから、母親の年齢というリスクファクターは決して軽視できる問題ではない。本研究によって、その原因とされている卵母細胞染色体の加齢によるコヒージョンの変化の有無を明らかにし、加齢依存性染色体不分離の発生機構を理解すれば、将来の生殖医療の進歩に役立つと期待される。 本年度は初めにマウスを用いた実験を行った。マウスでは加齢依存性の第一減数分裂不分離が起こらないと言われている。よって加齢マウスの卵母細胞には、コヒーシンの量や局在に変化があるかどうかは、ヒトの染色体不分離とコヒーシンの減少との関連性を裏付けるために重要となる。このために、さまざまな月齢のマウスの卵巣を採取した。また、コヒーシンを検出するために減数分裂特異的コヒーシにおけるの一つ、REC8に対する抗体を作成し、免疫染色やウエスタンブロットを行った。成体では卵巣内の卵母細胞の数が少ないため、コヒーシンの定量にはウエスタンブロットよりも免疫染色の方がより適していることが判明した。今後、コヒーシンの定量および分布を解析するための実験系を開発し、ヒトの卵巣組織にも応用する予定である。 ヒト卵巣組織を用いた研究に関しては、本年度に施設内倫理委員会の審査を受けて承認を得たので、インフォームドコンセントの上、試料採取(腫瘍摘出手術検体の正常部)を開始した。これを用いて、ヒトの卵母細胞のコヒージョン変化を調べる予定である。
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