研究概要 |
ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化するレセプターの1つであるNKG2Dは,本来腫瘍化や感染などのストレス負荷が加わった異常細胞で発現誘導されているNKG2Dリガンドを認識して直接的に傷害し排除する機能を有する。ヒトNKG2DリガンドであるULBP1-6などについては,その発現と疾患との関連性は不明点が多い。そこでヒト自己免疫疾患や移植関連疾患などの病理組織検体および患者血清におけるULBP蛋白の発現を検討し,疾患との関連性とその制御についての網羅的検討を行うことを目的として本研究は遂行されている。平成22年度は,ULBP1-6遺伝子を導入し発現させた細胞を作製して,パラフィン包埋されたヒト病理組織検体およびウエスタンブロッティングなどにも使用可能な抗ULBPポリクローナル抗体の作製を試み,作製された抗体についてその信頼性の確認を行ってきた。また現在市販されている種々の抗ULBP抗体について,パラフィン包埋されたヒト病理組織検体への使用の可能性についても初期検討を行ってきた。平成23年度は,これらの使用してきた抗体群を用いて,各種自己免疫疾患診断のために採取された検体に対して免疫染色を行い,NKG2Dリガンドの発現について検討する。また病変局所浸潤炎症細胞についても,特にNKG2Dを有するNK細胞やNKT細胞,abおよびgdT細胞の分布について免疫染色による細胞構成比の詳細な検索を行う。また種々のヒトEBV関連疾患について,それぞれの疾患におけるULBP4を中心としたNKG2Dリガンドの網羅的な発現プロファイルを解析検討する。さらに骨髄移植などの移植レシピエントに対して行われ得る拒絶反応や移植後炎症,CMVなどによる日和見感染症,移植片対宿主症候群(GVHD)などの病態の推移と,NKG2Dリガンドの発現の関連性を,経時的に検討する。
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