研究概要 |
ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化レセプターの1つであるNKG2Dは,本来腫瘍化や感染などのストレス負荷が加わった異常細胞で発現誘導されているNKG2Dリガンドを認識して,直接的に傷害し排除する。そこで,疾患とその発現の強弱との関連に不明点が多いヒトNKG2DリガンドであるULBP1-6を主体として,ヒト自己免疫疾患などを代表とする種々の炎症性疾患および様々な腫瘍性疾患において,診断・治療目的で採取された病理組織検体およびTissue Microarrayを用いて,病変局所におけるNKG2Dリガンド発現パターンの解析を行った。この結果腫瘍性疾患については,種々の上皮性悪性腫瘍において多様なNKG2Dリガンド発現パターンを示し,腫瘍組織特異的なNKG2Dリガンドの発現パターンは,大きく分けてcommon ULBP(1,2/6,3,5)とULBP4,MICA/Bの3パターンに分類されることが示唆された。また炎症性疾患においては,標的となる組織において特異的なNKG2Dリガンドの発現パターンが示唆される結果が得られたが,炎症の病勢の進行状況との関連性を考慮した検討を要する。さらにNKG2Dを有する免疫担当細胞による免疫監視からの回避における分子機構の解明を目指して,NK細胞やNKT細胞,αβおよびγδT細胞をはじめとする局所浸潤炎症細胞の分布について,一部検体について免疫染色による検索を行った。浸潤細胞のpopulationやその傾向についてはさらなる検討を要する。
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