研究課題
難治性疾患の一つである特発性間質性肺炎に対し、標的治療の開発は重要な課題となっている。近年、肺癌をはじめとする肺疾患へのエストロゲンの関与が注目されている。本研究では間質性肺炎と肺の線維化機構におけるエストロゲンの関与について検討した。昨年度、間質性肺炎/肺線維症組織において、エストロゲン受容体(ER:Estrogen Receptor)βが発現し、さらにエストロゲン合成酵素であるaromataseが同様に発現することを確認した。今回、このaromataseの発現が実際に肺線維化組織においてエストロゲン合成に関与しているか否か、剖検症例を用いた検討を行った。エストロゲン(estroneおよびestradiol)濃度についてはLC-MS/MSを用いて測定した。また、正常肺組織(肺癌非腫瘍部)におけるエストロゲン濃度を同様に測定し、比較対照とした。結果、estrone濃度は肺線維化組織(n=10)と正常肺組織(n=10)の間に差は認められなかったが、estradiol濃度については肺線維化組織(median:389pg/g)で正常肺組織(median:26pg/g)よりも有意(p=0.0003)に高い値を示した。肺線維化組織(n=10)と正常肺組織(n=10)についてaromataseの発現を免疫組織化学にて評価し、組織中のestradiol濃度と,の関係を検討した。結果、aromatase陽性症例(n=7:134pg/g)は同陰性症例(n=13:28pg/g)と比較して、有意(p=0.02)にestradiol濃度の値が高かった。以上の結果から、間質性肺炎/肺線維症組織においてはaromataseによってエストロゲンが局所で合成され、肺線維化に関与していると示唆された。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)
Expert Opinion on Therapeutic Targets
巻: 16 Suppl 1 ページ: S91-S102
10.1517/14728222.2011.630664
The Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology
巻: (未定)(印刷中)
10.1016/j.jsbmb.2011.12.004
医学のあゆみ
巻: 238(11) ページ: 1080-1081
巻: 127(3-5) ページ: 216-222
10.1016/j.jsbmb.2011.07.013