研究課題
ピロリ菌感染が胃癌や胃潰瘍の重要な要因となっていることは、広く受け入れられ信じられている。一方、アジア諸国においては、ピロリ菌感染頻度に大きな差がないにも関わらず胃癌発症頻度は国によって大きな違いがある。この点に関して、感染しているピロリ菌の違い(菌側因子)がアジア各国で異なり、それがピロリ菌感染症の重症度や続発する疾病の発生に影響する可能性が指摘されている。これまでに、ベトナムの臨床分離株でcagPAI遺伝子の一部が欠損していることと、その欠損パターンを明らかにした。本研究で、cagPAIの分子生物学的な機能を明らかにすると共に、病態形成においてcagPAI遺伝子が果たす役割を明らかにすることを目的とする。その結果、cagPAI遺伝子群に含まれる30個の遺伝子に欠損がないピロリ菌と、一部に欠損があるピロリ菌とで比較したところ、cagPAI遺伝子に欠損がないピロリ菌では、1.胃潰瘍の発生率が高く、2.組織学的に炎症の程度が強く、3.サイトカインIL-8の産生量が高く、4.細胞の結合性が高いこと等を明らかにして論文として発表した(Tung, Uchida et al. 2010)。これらの結果は、cagPAI遺伝子がピロリ菌の病原性に関与している可能性が強く示唆しており、日本とベトナムの胃がん発症率の違いにも関与している可能性がある。現在、その分子メカニズムについて詳細を解析すべく、ノックアウトピロリ菌の作製を行っているところである。
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