研究概要 |
Helicobacter pylori(ピロリ菌)の病原遺伝子cagPAIがピロリ菌の病原性に関与している可能性が指摘されている。これまでの研究でベトナムの臨床分離株103株のうち12株でcagPAI遺伝子の一部が欠損している(欠損型ピロリ菌)ことと、その欠損パターンを明らかにした。本研究で、cagPAIの分子生物学的な機能を明らかにすると共に、胃の病態形成においてcagPAI遺伝子が果たす役割を明らかにすることを目的として研究を行った。 ピロリ菌感染モデルとして、胃上皮細胞株AGS細胞、MKN45細胞にピロリ菌を感染させ、感染によって引き起こされるInterleukin(I1)-8の産生、AGS細胞のハミングバード表現型の形成、ピロリ菌の胃上皮細胞への接着を解析した。さらに、ピロリ菌株を採取した患者血清中のペプシノーゲンI,II、ガストリンの値を測定しcagPAI遺伝子型との関連性を検討した。欠損型ピロリ菌と完全型cagPAIを有する患者の内視鏡診断を比較したところ胃潰瘍や慢性胃炎との関連性が完全ピロリ菌よりも低かった。欠損ピロリ菌では、Il-8産生能やハミングバード表現型形成能が低く、胃上皮細胞への接着能も低かった。さらに、cagPAI欠損がペプシノーゲン値と関連していることを初めて明らかにした。これらのことから、cagPAI遺伝子の欠損がピロリ菌の毒性や胃粘膜の病変形成に重要な働きをしていることが明らかになった。
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